熟成肉とは、一定期間低温で貯蔵して熟成させることで、旨味が強く、肉質は柔らかい、美味しい状態となった肉のことです。熟成の方法は複数ありますが、いずれも温度や湿度、衛生状態などが適切に管理された環境のもと、数週間保存して熟成させます。
しかし、熟成肉と呼ばれるものには、実は正しい熟成方法が行われていないものもあります。ここでは、牛肉の熟成に関する3つの誤解を解き明かします。
- 誤解その1：牛肉は骨を外すと熟成しない
- 誤解その2：骨を外した肉は熟成肉ではない
- 誤解その3：真空では熟成しない
誤解その1：牛肉は骨を外すと熟成しない
牛肉は骨を外すと熟成しないというのは、一部の事実に基づいた誤解です。
牛肉の熟成には、骨付きのまま熟成させる方法と、骨を外して熟成させる方法があります。骨付きのまま熟成させる方法は、枝肉のまま吊るし熟成する「枯らし熟成」や、骨付きの塊肉のまま乾燥させる「ドライエイジング」などがあります。骨を外して熟成させる方法は、パーツごとに分けて真空にして貯蔵する「ウェットジング」などがあります。
骨付きのまま熟成させる方法の利点は、骨が肉に負担をかけずに重力を分散させることで、肉質が柔らかくなりやすいことです。また、骨に含まれるコラーゲンやカルシウムなどの成分が肉に移行することで、旨味や香りが増すこともあります。しかし、骨付きのまま熟成させる方法の欠点は、水分が抜けることで肉の容量が小さくなり、また表面にカビが生えることで削る必要があることで、歩留まりが悪くなることです。つまり、無駄な部分が出て効率が悪く、コストが高くなることです。
骨を外して熟成させる方法の利点は、水分があまり減らずに、表面にカビが生えないことで、歩留まりが良くなることです。つまり、効率が良く、コストが安くなることです。しかし、骨を外して熟成させる方法の欠点は、肉質が柔らかくなるのに時間がかかることや、骨からの成分移行がないことで、旨味や香りが弱くなることもあります。
以上のように、牛肉の熟成には、骨付きのまま熟成させる方法と、骨を外して熟成させる方法があり、それぞれに利点と欠点があります。どちらの方法も、適切に管理された環境で行われれば、熟成肉と呼べるものです。したがって、牛肉は骨を外すと熟成しないというのは、正しくありません。
誤解その2：骨を外した肉は熟成肉ではない
骨を外した肉は熟成肉ではないというのは、誤解その1と同様に、一部の事実に基づいた誤解です。骨を外した肉は、ウェットエイジングという方法で熟成させることができます。ウェットエイジングは、真空にして貯蔵庫で寝かす技法で、数日寝かせると、肉の酵素の働きにより肉質が柔らかく、旨味も増すことがわかりました。ウェットエイジングは、保存するために使用されていたこともあり、管理がしやすく、流通の過程である程度時間が経っており、店頭に並んでいる牛肉のほとんどがウェットエイジングされたものでしょう。
ウェットエイジングされた肉は、ドライエイジングや枯らし熟成された肉ほどには旨味が増しませんが、それでも熟成肉と呼べるものです。ウェットエイジングされた肉は、ねっとりとして旨味があり、チーズやバターのような濃厚な香りがするものもあります。したがって、骨を外した肉は熟成肉ではないというのは、正しくありません。
誤解その3：真空では熟成しない
真空では熟成しないというのは、熟成のしくみを理解していないことによる誤解です。熟成のしくみは、肉の酵素の働きによってタンパク質が分解されて、アミノ酸やペプチドといった旨味成分になることです1。この酵素の働きは、空気に触れる必要はありません。真空にしても、酵素の働きは続きます。真空にすることで、外気に触れないようにすることで、肉の劣化を防ぐことができます3。
真空にすることで、肉の乾燥やカビの発生を抑えることができますが、それは熟成を妨げることではありません。むしろ、肉の水分や風味を保つことができます。
熟成肉とは、肉の旨味や食感を向上させるために、特殊な保存方法で低温で寝かせた肉のことです。熟成肉には、ドライエイジング、ウェットエイジング、枯らし熟成、乳酸菌熟成という4つの方法がありますが、その中でもドライエイジングが最も本格的な熟成肉と言えます。ドライエイジングとは、肉を真空パックにせずに、風を当てながら乾燥させる方法です。この方法では、肉に付着する菌類の働きで旨味が増し、ナッツのような香りや独特の柔らかさが生まれます。しかし、この方法は非常に難しく、素人が家庭で行うのは危険です。なぜなら、熟成と腐敗の見分けがつかない可能性が高く、腐敗した肉には強い毒性があるからです。また、ドライエイジングには骨が付いたままの枝肉が必要です。骨を外した肉は熟成しないのです。骨には肉の旨味を引き出す成分が含まれており、骨を外すと肉の水分が失われてしまいます。そのため、骨を外した肉は熟成肉とは言えません。ウェットエイジングとは、肉を真空パックに入れて貯蔵する方法です。これはあくまで保存方法であり、美味しくするための方法ではありません。ウェットエイジングでは、肉の水分が抜けずに残ります。そのため、ドライエイジングのような香りや柔らかさは得られません。真空パックに入れると、肉の呼吸が止まり、熟成が進まなくなります。そのため、真空では熟成しないのです。以上のことから、熟成肉は骨を外すと熟成しない、骨を外した肉は熟成肉ではない、真空では熟成しないということが分かります。熟成肉はプロの技術と設備が必要なものであり、家庭で作るのは不可能です。熟成肉を食べたいなら、信頼できるお店で食べるか、オンラインで注文するのがおすすめです。